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トルコ語を勉強する

トルコ語を勉強しています。研究に専念する義務があるので、トルコ語に関する論文を読んで要旨や感想を書いてみたり、トルコ語に関する興味深い刊行物があれば紹介してみたり、単語帳作ってみたり、そういうことをします。以前はタタール語についても少し書いていました。

タタール語文法:母音調和

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コメント

1. 無題

こんにちは。私はカザンでタタール語を勉強しています。日本でタタール語へ関心を持つ方が増えていることを大変嬉しく思います。以下、気付いた点を書きました。

誤 universität-ı 正 universitet-ı

タタール語の音韻体系に当てはまらない外来語には後舌のバリアントが付くのが原則ですのでibarakiには-daがつくと思います。ロシア語の軟音で終わる単語や語末が-ия,-иеの単語には前舌のバリアントが付きます。
例 февральдә, филармониядә, учреждениедә

Re:無題

Юныс Хашимовさん、貴重な情報と訂正ありがとうございます。
私は先にトルコ語をやっている影響か、バイアスがかかった一般化をしがちなので、このような情報を頂けると大変ありがたいです。財産にいたします。

>誤 universität-ı 正 universitet-ı
は訂正しました。Universitätはドイツ語……。

>タタール語の音韻体系に当てはまらない外来語には後舌のバリアントが付くのが原則ですのでibarakiには-daがつくと思います。ロシア語の軟音で終わる単語や語末が-ия,-иеの単語には前舌のバリアントが付きます。
>例 февральдә, филармониядә, учреждениедә
え、そうなのですか。てっきり母音調和の例外は子音で終わるものに限るのかと……。
ibarakiがタタール語の音韻体系に当てはまらないというのはどういうことでしょう。語内部での母音調和が崩れているということでしょうか。

>厳密に言うと円唇同化のようなものがありますが、表記には反映されません。
>例 тормыш-ның (発音はтормош-ноңに近い)
>ただし、第1音節から離れるに従って円唇が緩んでいくとされています。
なるほど。実際の音声は円唇の影響を受けているのですね。
確かPoppeのTatar Manualに「4つの中母音е, ө, ы, оはかなり中舌化してしまっている」みたいな記述があったと記憶していますが、
一聴して音を聞き分けるのはトルコ語より難しい気がします。

>ラテン文字正書法は2000年頃に制定されたものがありますが、ä, ö, ñの三文字は別の文字が採用されていました。ソ連崩壊後進められてきたラテン文字化はその後頓挫し、今はキリル文字が使われています。2012年に文字に関する法律が定められ、それによると上の三文字が採用されましたが、新しい正書法は定められていません。
ラテン文字正書法もころころ変わってるんですね。
基本的に当たれるデータや文献ってほぼキリル文字なので、私はローマ字で始めましたが必要上少しずつキリル文字にも触れています。
数か月のんびりやってキリル文字でもある程度読めるようになりましたが、まだ慣れない。
(ちなみにロシア語はできません。ロシア語ができればかなり世界が広がるのは分かってるんですが、食わず嫌いというか笑)

とにかくもっと精進します。ありがとうございます。

2. 円唇同化

厳密に言うと円唇同化のようなものがありますが、表記には反映されません。
例 тормыш-ның (発音はтормош-ноңに近い)
ただし、第1音節から離れるに従って円唇が緩んでいくとされています。
お隣のバシキール語ではタタール語よりも円唇同化が強いためか、表記にも反映されています。
例 тормош-ом-доң (タタール語はтормыш-ым-ның)

3. ラテン文字正書法

ラテン文字正書法は2000年頃に制定されたものがありますが、ä, ö, ñの三文字は別の文字が採用されていました。ソ連崩壊後進められてきたラテン文字化はその後頓挫し、今はキリル文字が使われています。2012年に文字に関する法律が定められ、それによると上の三文字が採用されましたが、新しい正書法は定められていません。ちなみに2000年の正書法に従うと(文字は新しいので書きます)、Törkiäと書くことになっていますが、個人的にはTörkiyäの方がいいと思っています。

4. 無題

母音調和の例外についてですが、外来語の中でもタタール語化していないものは、基本的に後舌のバリアントが付きます。
例 Берлин-да, Һелсинки-да, супермаркет-та
例を見る限り、子音の影響とするのは難しいでしょう。
私の指導教官は、これらの外来語の母音は、タタール語の中で規格外なものとされるため、このようなことが起こるのではないかと話していました。
ちなみにこんな面白い例外もあります。ロシアの都市Омскに-даがつくとОмскидаとなります。

5. 無題

е, ы, о, өについてですが、おっしゃる通りこれらは中舌気味で、弱化母音と説明される事が多いです。これらの弱化母音はお隣のバシキール語やチュヴァシ語にも見られ、ヴォルガ・ウラル地域のチュルク語の共通の特徴の一つとなっています。確かにトルコ語の対応する母音と比べて音色が曖昧な感じに聞こえますね。はじめは発音したり聞き取ったりするのが難しいと思いますが、ずっと聞いていると慣れてきます。タタール語を学ぶのにロシア語は避けて通れないのですが、半年住んでいながらなかなか出来るようになりません^^;

ただいまコメントを受けつけておりません。

タタール語文法:母音調和

一般にテュルク系の言語には母音調和という現象が見られますが、タタール語も例外でなく母音調和があります。ここではひとまず、接尾辞などが付いた場合の母音調和について。

タタール語は次のような母音体系を持ちます:
非円唇 円唇 非円唇 円唇
i ü u
e ö ı o
ä a

トルコ語とは(一見)異なり、e-ı, ä-aと対応するのがミソです。
タタール語では母音調和現象により接尾辞内の母音が交替しますが、これは次の3種類であって、全て前後同化です。トルコ語のような非円唇・円唇の同化はありません。その点でトルコ語よりシンプルだと言えるかもしれません。

(1) e-ı の交替
対格-ne/-ni、DI過去形-de/-dı、受身接辞-el/-ıl、形容詞派生接辞-le/-lıなど。

(2) ä-a の交替
位置格-dä/-da、未来形-äçäk/-açak、条件形-sä/-sa、名詞派生接辞-çä/-çaなど。

(3) ü-u の交替
動名詞-ü/-u、分詞接辞-üçe/-üçıくらい? 数は少ない。


具体的には、たとえば位置格「~に、~で」は-dä/-daという2種類の形を持ちますが、これは語の最終母音が「前舌母音」なのか「後舌母音」なのかによって使い分けられるというわけです:
前舌母音であれば
 Törkiyä-dä 「トルコで、トルコに」  (Törkiyä-daとはならない)
 şähär-dä 「街で、街に」
 İbaraki-dä 「茨城で、茨城に」
後舌母音であれば
 Qazan-da「カザンで、カザンに」 (Qazan-däとはならない)
 Tatarstan-da 「タタールスタンで、タタールスタンに」
 Tokyo-da  「東京で、東京に」

以上のように非常に多くの接尾辞は2つの異形態を持ちます。ややこしく思えるかもしれませんが、慣れれば、舌の位置を動かさずに喋れるので楽です。


母音調和の例外は外来語に非常に多いです。言 語学的には、母音調和は最終母音の「舌の前後位置」がそのまま接尾辞に引き継がれる現象ですが、こういった例外的な語では最終子音に「舌の前後」の情報が 残ってしまっているために、接尾辞には母音ではなく子音の情報が引き継がれ、例外的なふるまいを見せるという風に扱うと思います。コメント頂いたので一時的に消しておきます。整理がつき次第、きちんと書きなおします。
(ex) universitet-ı「大学」 tarix-ı「歴史」


最終更新
2015-3-1 とりあえず作成。例外の量足りず。
2015-3-2 Юныс Хашимовさんのコメントを反映。

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コメント

1. 無題

こんにちは。私はカザンでタタール語を勉強しています。日本でタタール語へ関心を持つ方が増えていることを大変嬉しく思います。以下、気付いた点を書きました。

誤 universität-ı 正 universitet-ı

タタール語の音韻体系に当てはまらない外来語には後舌のバリアントが付くのが原則ですのでibarakiには-daがつくと思います。ロシア語の軟音で終わる単語や語末が-ия,-иеの単語には前舌のバリアントが付きます。
例 февральдә, филармониядә, учреждениедә

Re:無題

Юныс Хашимовさん、貴重な情報と訂正ありがとうございます。
私は先にトルコ語をやっている影響か、バイアスがかかった一般化をしがちなので、このような情報を頂けると大変ありがたいです。財産にいたします。

>誤 universität-ı 正 universitet-ı
は訂正しました。Universitätはドイツ語……。

>タタール語の音韻体系に当てはまらない外来語には後舌のバリアントが付くのが原則ですのでibarakiには-daがつくと思います。ロシア語の軟音で終わる単語や語末が-ия,-иеの単語には前舌のバリアントが付きます。
>例 февральдә, филармониядә, учреждениедә
え、そうなのですか。てっきり母音調和の例外は子音で終わるものに限るのかと……。
ibarakiがタタール語の音韻体系に当てはまらないというのはどういうことでしょう。語内部での母音調和が崩れているということでしょうか。

>厳密に言うと円唇同化のようなものがありますが、表記には反映されません。
>例 тормыш-ның (発音はтормош-ноңに近い)
>ただし、第1音節から離れるに従って円唇が緩んでいくとされています。
なるほど。実際の音声は円唇の影響を受けているのですね。
確かPoppeのTatar Manualに「4つの中母音е, ө, ы, оはかなり中舌化してしまっている」みたいな記述があったと記憶していますが、
一聴して音を聞き分けるのはトルコ語より難しい気がします。

>ラテン文字正書法は2000年頃に制定されたものがありますが、ä, ö, ñの三文字は別の文字が採用されていました。ソ連崩壊後進められてきたラテン文字化はその後頓挫し、今はキリル文字が使われています。2012年に文字に関する法律が定められ、それによると上の三文字が採用されましたが、新しい正書法は定められていません。
ラテン文字正書法もころころ変わってるんですね。
基本的に当たれるデータや文献ってほぼキリル文字なので、私はローマ字で始めましたが必要上少しずつキリル文字にも触れています。
数か月のんびりやってキリル文字でもある程度読めるようになりましたが、まだ慣れない。
(ちなみにロシア語はできません。ロシア語ができればかなり世界が広がるのは分かってるんですが、食わず嫌いというか笑)

とにかくもっと精進します。ありがとうございます。

2. 円唇同化

厳密に言うと円唇同化のようなものがありますが、表記には反映されません。
例 тормыш-ның (発音はтормош-ноңに近い)
ただし、第1音節から離れるに従って円唇が緩んでいくとされています。
お隣のバシキール語ではタタール語よりも円唇同化が強いためか、表記にも反映されています。
例 тормош-ом-доң (タタール語はтормыш-ым-ның)

3. ラテン文字正書法

ラテン文字正書法は2000年頃に制定されたものがありますが、ä, ö, ñの三文字は別の文字が採用されていました。ソ連崩壊後進められてきたラテン文字化はその後頓挫し、今はキリル文字が使われています。2012年に文字に関する法律が定められ、それによると上の三文字が採用されましたが、新しい正書法は定められていません。ちなみに2000年の正書法に従うと(文字は新しいので書きます)、Törkiäと書くことになっていますが、個人的にはTörkiyäの方がいいと思っています。

4. 無題

母音調和の例外についてですが、外来語の中でもタタール語化していないものは、基本的に後舌のバリアントが付きます。
例 Берлин-да, Һелсинки-да, супермаркет-та
例を見る限り、子音の影響とするのは難しいでしょう。
私の指導教官は、これらの外来語の母音は、タタール語の中で規格外なものとされるため、このようなことが起こるのではないかと話していました。
ちなみにこんな面白い例外もあります。ロシアの都市Омскに-даがつくとОмскидаとなります。

5. 無題

е, ы, о, өについてですが、おっしゃる通りこれらは中舌気味で、弱化母音と説明される事が多いです。これらの弱化母音はお隣のバシキール語やチュヴァシ語にも見られ、ヴォルガ・ウラル地域のチュルク語の共通の特徴の一つとなっています。確かにトルコ語の対応する母音と比べて音色が曖昧な感じに聞こえますね。はじめは発音したり聞き取ったりするのが難しいと思いますが、ずっと聞いていると慣れてきます。タタール語を学ぶのにロシア語は避けて通れないのですが、半年住んでいながらなかなか出来るようになりません^^;

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